内製化コラム
AIエージェントは、どの業務で効果を出しやすいのか――身近な業務改善から始める活用設計

- AIエージェントは、どの業務で効果を出しやすいのか――身近な業務改善から始める活用設計
- AIエージェントは、チャットボットや従来の自動化と何が違うのか
- 効果を出しやすいのは「頻度が高く、複数の情報を集める業務」
- 活用例1:問い合わせ対応
- 活用例2:営業活動と顧客フォロー
- 活用例3:受注・発注書などの文書処理
- 活用例4:会議後のタスク管理
- 活用例5:経営レポートと経理業務
- 活用例6:物流・配車・スケジュール調整
- AIエージェントに向かない業務もある
- 発生頻度が低い業務
- 業務ルールが整理されていない業務
- 誤りの影響が非常に大きい業務
- 利用するデータの品質が低い業務
- 最初のユースケースを選ぶ4つの問い
- 1.繰り返し発生しているか
- 2.現在どれくらい時間がかかっているか
- 3.何件のシステムや情報源を確認しているか
- 4.間違えた場合の影響はどの程度か
- 人が確認するポイントを、最初から設計する
- 日本企業では、既存システムの間に残る手作業から始める
- RetoolでAIエージェントを業務プロセスに組み込む
- 導入後に確認すべきこと
- まとめ:AIエージェントは、身近な業務改善から始める
AIエージェントは、どの業務で効果を出しやすいのか――身近な業務改善から始める活用設計
生成AIの業務活用は、文章の作成や要約から、業務を実際に進める段階へ移りつつあります。
問い合わせ内容を読み取り、顧客情報を確認して担当部署へ振り分ける。商談前に複数の情報源を調べ、営業担当者向けの資料を準備する。受注書を読み取り、商品マスターと照合してシステムへ登録する。
こうした複数の作業を、状況に応じて順番に進める仕組みがAIエージェントです。
AIエージェントという言葉から、すべての判断を人に代わって行う高度な仕組みを想像することもあります。しかし、企業の実務で効果を出しやすいのは、最初から業務を完全に自動化する使い方とは限りません。
実際には、情報収集、確認、分類、下書き、候補提示といった作業をAIに任せ、最終的な判断や例外対応を人が行う設計が現実的です。
大切なのは、AIエージェントを導入すること自体を目的にしないことです。どの業務に繰り返し作業があり、どの情報を集める必要があり、どの判断は人が行うべきかを整理する。そのうえで、適した業務から小さく始めることが重要です。
AIエージェントは、チャットボットや従来の自動化と何が違うのか
チャットボットは、利用者からの質問に対して回答を返すことが主な役割です。
一方、AIエージェントは、回答を生成するだけでなく、目的を達成するために必要な作業を考え、複数のツールやシステムを利用して処理を進めます。
たとえば、顧客から請求内容に関する問い合わせが届いた場合、チャットボットは一般的な案内を返すことができます。
AIエージェントであれば、問い合わせ内容を分類し、CRMから顧客情報を取得し、請求システムで契約内容を確認し、過去の対応履歴を調べたうえで、回答案を作成するところまで進められます。設定された範囲内であれば、担当部署への振り分けやステータス更新も可能です。
従来のワークフロー自動化との違いは、処理の途中で状況を読み取り、次に行う作業を選べる点にあります。
従来の自動化は、「条件Aなら処理Bを実行する」といった事前に定められた手順に向いています。AIエージェントは、入力内容が一定でない問い合わせや文書を解釈し、利用する情報や処理を状況に応じて変えられます。
ただし、両者は置き換えの関係ではありません。
確実に同じ結果を求める処理には従来のワークフローを使い、文章の理解や複数の情報を踏まえた判断が必要な部分にAIを使う。両者を組み合わせることで、実務に適した仕組みを作りやすくなります。
効果を出しやすいのは「頻度が高く、複数の情報を集める業務」
AIエージェントに向いているのは、単に時間がかかる業務ではありません。
特に効果を出しやすいのは、次のような特徴を持つ業務です。
毎日または毎週、繰り返し発生する
複数のシステムやファイルから情報を集める
入力内容にばらつきがあり、単純な条件分岐では扱いにくい
一定の判断基準や業務ルールがある
結果を別のシステムへ登録・更新する必要がある
例外が発生した場合、人へ引き継げる
たとえば、月に一度だけ発生する10分程度の作業を自動化しても、大きな効果は期待しにくいでしょう。
一方で、毎日数十件発生し、一件ごとにCRM、メール、契約情報、社内ナレッジを確認している業務であれば、情報収集と下準備を自動化するだけでも、担当者の負担を減らせます。
AIエージェントの活用では、技術的に実現できるかだけでなく、業務の頻度、現在かかっている時間、ミスが起きた場合の影響を確認することが重要です。
活用例1:問い合わせ対応
問い合わせ対応は、AIエージェントの活用を検討しやすい業務の一つです。
一般的な問い合わせ対応では、担当者が問い合わせ内容を読み、顧客情報を確認し、過去の対応履歴を探し、必要に応じて社内の担当部署へ確認します。その後、回答を作成し、チケットのステータスを更新します。
AIエージェントを使うと、次のような作業を支援できます。
問い合わせ内容の分類と優先度の判定
顧客情報、利用履歴、契約状況の取得
過去の類似問い合わせや対応履歴の検索
社内ナレッジをもとにした回答案の作成
適切な担当部署への振り分け
チケットや対応ステータスの更新
解約リスクや緊急度の高い案件の通知
ここで重要なのは、すべての問い合わせを完全に自動化しようとしないことです。
営業時間、パスワード再設定、基本的な操作方法など、対応ルールが明確な問い合わせは自動処理しやすいでしょう。
一方で、返金、契約変更、重大な障害、感情的な苦情などは、人の確認を挟む方が適しています。
AIが必要な情報を集め、回答案を用意し、担当者が最終確認を行う。この分担から始めることで、対応品質を保ちながら、確認作業を減らしやすくなります。
活用例2:営業活動と顧客フォロー
営業活動では、顧客と話す時間以外にも多くの準備作業が発生します。
見込み顧客の企業情報を調べる。CRMの過去履歴を確認する。商談内容を記録する。次に連絡すべき顧客を探す。フォローアップメールを作成する。
こうした周辺業務は重要ですが、営業担当者の時間を大きく消費します。
AIエージェントを活用すると、次のような支援が考えられます。
問い合わせ内容や企業属性をもとにした見込み顧客の分類
企業情報、ニュース、CRM情報の収集
CRMの企業・担当者情報の登録や補完
商談前の顧客概要や確認項目の作成
会議記録から課題、関心事項、次のアクションを抽出
フォローが必要な顧客の抽出
過去の関係性を踏まえたメール案の作成
担当者や営業チームへの案件振り分け
営業活動で効果を出すためには、AIに一般的な営業文を作らせるだけでは不十分です。
顧客の業種、過去の会話、利用製品、商談段階、社内の営業方針などを参照できる状態にすることで、業務に沿った支援が可能になります。
また、AIがCRMを自動更新する場合には、誤った企業や担当者へ情報を登録しないよう、重複確認や人による承認を組み込むことも必要です。
活用例3:受注・発注書などの文書処理
バックオフィスでは、メールやPDFで届いた文書を確認し、必要な情報をシステムへ入力する業務が多く残っています。
発注書の処理では、担当者がPDFを開き、顧客名、商品名、数量、納期、金額などを確認し、販売管理システムやERPへ登録します。記載方法が取引先ごとに異なる場合、単純な自動転記では対応しにくくなります。
AIエージェントを使うことで、次のような流れを構築できます。
メールに添付された発注書を取得する
PDFや画像から必要項目を読み取る
顧客・商品マスターと照合する
数量、価格、納期の不備を確認する
問題がなければ受注データを登録する
判断できない場合は担当者へ確認を依頼する
処理結果と元ファイルを保存する
このような業務では、読み取り精度だけでなく、マスターデータとの照合が重要です。
AIが文書から抽出した商品名と、社内で利用している商品コードが一致しなければ、そのまま登録することはできません。
AIによる抽出、既存データによる検証、人による例外確認を組み合わせることで、入力作業を減らしながら、誤登録のリスクを抑えられます。
活用例4:会議後のタスク管理
会議では多くの判断や依頼が発生しますが、その内容が正式なタスクとして登録されないことがあります。
議事録には残っていても、担当者や期限が明確でない。プロジェクト管理ツールへの登録が後回しになる。同じタスクが重複して作成される。
AIエージェントは、会議記録から次のアクションを抽出し、業務へつなげる役割を担えます。
会議の文字起こしや議事録を取得する
決定事項とアクション項目を抽出する
担当者と期限を特定する
既存タスクとの重複を確認する
プロジェクト管理ツールへタスクを登録する
参加者へ確認用のまとめを送る
発言内容が曖昧な場合や、担当者が明確でない場合は、自動登録せず、確認を求める設計が適しています。
会議の要約だけで終わらず、実際のタスク登録や通知までつなげることで、AIの出力を業務の進行に活かせます。
活用例5:経営レポートと経理業務
経営レポートの作成では、会計システム、販売管理、予算管理、スプレッドシートなど、複数の情報源からデータを集めることがあります。
担当者は数字を集計し、前月や予算との差を確認し、グラフと説明文を作成して関係者へ送付します。
AIエージェントを活用すると、次のような処理を支援できます。
会計システムやデータベースから必要な数値を取得する
売上、利益、キャッシュフローなどを集計する
前月、前年、予算との差異を確認する
異常値や大きな変化を抽出する
グラフやレポートを生成する
関係者へ定期的に配信する
経理領域では、AIが計算結果を独自に作るのではなく、正式なシステムの数値を取得し、その説明や確認を支援する形が適しています。
最終的な数値の確定や対外的な報告については、人による確認が必要です。
AIには情報収集、差異の抽出、説明文の下書きを任せ、担当者が内容を確認することで、レポート作成の時間を短縮しやすくなります。
活用例6:物流・配車・スケジュール調整
物流や現場作業では、多くの条件を考慮しながら、ルート、運送会社、担当者、作業日を決める必要があります。
輸送方法を検討する場合、料金だけでなく、納期、積載量、対応地域、車両の空き状況などを確認します。現場スタッフの配置では、勤務可能日、スキル、移動時間、担当エリアなどが条件になります。
AIエージェントは、複数の情報を集めて比較し、候補を提示する業務に向いています。
複数の運送会社から料金や条件を取得する
納期や荷物の条件に合う輸送方法を比較する
推奨するルートや運送会社を提示する
承認後に予約や出荷手続きを行う
スタッフの空き状況と案件条件を照合する
スケジュール案を作成する
確定後に関係者へ通知する
すべてをAIが決定するのではなく、候補の比較と下準備を任せ、最終判断を担当者が行うところから始めると導入しやすくなります。
AIエージェントの活用では、最初から大規模な自動化を目指すのではなく、繰り返し発生する手作業や、複数システムの情報を確認する業務から始めることが重要です。
Retoolを活用したAI・業務改善のユースケースをまとめた資料をご用意しています。活用イメージを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
お問い合わせ
AIエージェントに向かない業務もある
AIエージェントは、あらゆる業務を自動化するためのものではありません。
次のような業務は、最初の活用対象として慎重に検討する必要があります。
発生頻度が低い業務
年に一度しか発生しない作業や、処理時間が短い作業は、構築や保守にかかる負担に対して効果が小さくなる場合があります。
業務ルールが整理されていない業務
担当者ごとに進め方が異なり、正しい結果の定義がない状態では、AIへ渡す指示や評価基準を作れません。
まずは業務プロセスと判断基準を整理する必要があります。
誤りの影響が非常に大きい業務
高額な送金、契約の確定、従業員の処遇、医療判断など、誤った処理を元に戻しにくい業務では、AIによる完全自動化は適していません。
AIを情報整理や候補提示に利用し、最終判断は人が行う設計が必要です。
利用するデータの品質が低い業務
顧客名や商品コードが統一されていない、更新されていない情報が多い、複数のシステムで内容が食い違うといった状態では、AIも正しい判断を行いにくくなります。
AIに与える情報量を増やす前に、利用するデータの正確性を確認することが重要です。
最初のユースケースを選ぶ4つの問い
AIエージェントの活用候補が多く、どこから始めるべきか判断できない場合は、次の4点を確認すると整理しやすくなります。
1.繰り返し発生しているか
毎日、毎週、複数の担当者が行っている業務ほど、改善効果を積み上げやすくなります。
2.現在どれくらい時間がかかっているか
一件あたりの時間だけでなく、件数と担当者数を含めて確認します。
3.何件のシステムや情報源を確認しているか
CRM、メール、データベース、社内ナレッジなど、複数の情報を行き来している業務は候補になりやすいでしょう。
4.間違えた場合の影響はどの程度か
誤りを容易に修正できるか、顧客や金銭に影響するかを確認します。
最初の取り組みでは、頻度と時間が大きく、誤りが発生しても人が修正できる業務が適しています。
文書からの情報抽出、データ入力、レポート作成、問い合わせ分類、商談準備などから始め、効果を確認した後に、更新や実行まで範囲を広げる方法が現実的です。
人が確認するポイントを、最初から設計する
AIエージェントの導入では、自動化率を高めることが必ずしも最優先ではありません。
重要なのは、AIが得意な作業と、人が判断すべき作業を分けることです。
たとえば、次のような分担が考えられます。
AIが担当しやすい作業
情報収集
文書の読み取り
分類や優先度判定
類似事例の検索
回答案やレポートの下書き
候補の比較
不備や異常の可能性の提示
人が担当すべき作業
重要な契約や金額の確定
顧客への正式な回答
例外案件への対応
AIが判断できない案件の処理
業務ルールそのものの変更
責任を伴う最終承認
AIの判断に自信がない場合や、条件に合わない場合は、自動的に担当者へ引き継ぐ仕組みも必要です。
人による確認は、AI活用の妨げではありません。安心して自動化の範囲を広げるための設計です。
日本企業では、既存システムの間に残る手作業から始める
日本企業では、基幹システム、CRM、会計システム、グループウェアなど、すでに多くのシステムが導入されています。
一方で、実際の業務では、それらの間を人がつないでいることがあります。
CRMを見てから販売管理システムを確認する。メールの添付ファイルをExcelへ入力する。会議の内容をプロジェクト管理ツールへ転記する。複数のシステムから情報を集めて月次レポートを作る。
こうした「システムの間に残る作業」は、AIエージェントの活用候補になります。
重要なのは、既存システムをAIエージェントに置き換えることではありません。
既存システムを正式なデータの保存先として維持し、その情報を収集・整理し、次の処理へつなげる部分を支援させます。
これにより、大規模なシステム刷新を待たず、現場に残っている手作業を段階的に減らせます。
RetoolでAIエージェントを業務プロセスに組み込む
Retoolは、AIエージェントだけを単独で作るツールではありません。
社内業務アプリ、管理画面、ワークフロー、AIエージェントを、既存のデータベース、SaaS、API、社内システムと接続して構築するための開発プラットフォームです。
Retool Agentsでは、エージェントにデータベースへのクエリ、既存のワークフロー、API、MCPサーバーなどをツールとして与え、実際の業務に必要な情報取得や処理を行わせることができます。
また、エージェントの実行状況を確認し、各処理を追跡しながら、評価や改善を行うことも可能です。
Retoolを活用する意味は、AIエージェントを作れることだけではありません。
AIが情報を集め、判断候補を提示し、人が業務アプリの画面上で確認する。その後、承認された内容をワークフローが既存システムへ反映する。この一連の流れを同じ基盤上で構築できます。
たとえば、問い合わせ対応では、AIが顧客情報や履歴を集め、回答案を作成します。担当者はRetoolの画面で内容を確認し、必要に応じて修正したうえで返信します。
受注処理では、AIが発注書を読み取り、商品マスターと照合します。判断できない項目だけを担当者へ表示し、確認後に販売管理システムへ登録します。
このように、AIエージェント、業務画面、ワークフロー、人の確認を組み合わせることで、AIを単発の実験ではなく、日常業務の一部として運用しやすくなります。
導入後に確認すべきこと
AIエージェントは、公開して終わりではありません。
業務ルール、利用するデータ、顧客の問い合わせ内容は変化します。運用しながら、エージェントの結果を確認し、改善を続ける必要があります。
導入後は、次のような項目を確認します。
どれだけの案件を処理したか
人へ引き継いだ割合はどの程度か
誤った分類や処理はなかったか
担当者の作業時間は減ったか
利用者が結果を修正する頻度はどの程度か
一件あたりの処理時間や費用は適切か
どの業務ルールで判断に迷っているか
処理件数だけでなく、品質と人の負担を合わせて評価することが重要です。
エージェントが処理した件数が多くても、担当者が毎回内容を大きく修正しているのであれば、業務改善につながっているとは言えません。
判断に失敗した例や、人へ引き継いだ案件を分析することで、指示、業務ルール、利用するデータを改善できます。
まとめ:AIエージェントは、身近な業務改善から始める
AIエージェントは、文章を生成するだけでなく、複数のシステムから情報を集め、状況に応じて作業を進めることができます。
問い合わせ対応、営業準備、文書処理、タスク管理、経営レポート、物流やスケジュール調整など、活用できる領域は幅広くあります。
ただし、最初から複雑な業務を完全に自動化する必要はありません。
頻度の高い手作業を選び、AIに情報収集や下準備を任せ、人が確認して判断する。効果と精度を確認しながら、処理の範囲を段階的に広げる方法が現実的です。
AIエージェントの価値は、人を業務から完全に外すことではありません。
担当者が情報を探し、転記し、整理する時間を減らし、本来必要な判断や顧客対応に集中できる状態を作ることです。
どの技術を使うかを考える前に、どの業務で繰り返し作業が発生し、どこに人の判断が必要なのかを整理する。その業務設計が、AIエージェントを実務に定着させる出発点になります。
AIエージェントの活用では、自社の業務に合ったユースケースを選び、AIに任せる作業と人が確認する作業を整理することが重要です。
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